ランプ

青木 繁「ランプ」
1901年(明治34年)水彩、紙、31.5×22.5cm

青木繁は、十八歳で東京美術学校に入学し、わずか二十八歳の若さで他界した天才画家である。従って残存する作品は少ない。この「ランプ」は、最も初期の作品で、夏休みに郷里の久留米に帰った時に、描かれたものといわれる。ランプスタンドを数冊の本の上に置くことで、安定感のある構図にまとめ、描かれた物の観察眼は鋭く、描写力も的確なものを感じさせる。特に目を吸い寄せられるのは、背景である。絵の具のにじみによる偶然性な技法を、巧みに生かしている。さらに天性優れた色彩感覚で、赤、緑、青の配置や背景の微妙な色斑に、彼の才能を感じる。この作品は、私の祖父が終戦後、大阪の料亭旅館に飾られていたのを無理を言って譲り受けたと聞いています。 (河村 栄三)