筑後風景

「筑後風景」1910年(明治43年)
青木繁
1882年(明治15)~1911年(明治44)
油彩·板、22.5x32.5cm

 2月ご紹介した「夕焼けの海」と同じ年代に描かれた作品です。青木は1909年秋以降、病状が悪化する1910年までの1年余りを佐賀県内を放浪しながら過ごしています。「筑後風景」と題されているが、佐賀平野または、小城あたりで制作されたと思われる。画面中央より下に地平線をおき、広々とした空の下で、収穫に励む農婦たちと荷を背負う馬を配した、田園風景が描かれている。茶系、緑系を基調として畦道や人物が絵を引き締め、画面に動きや奥行きを与えている。大胆な筆致で広い空間と明るい日差しを感じさせる。絶頂期の幻想的表現ではなく、印象派的表現のさわやかな作品である。
 なお、祖父がこの作品を入手した時、裏面に「佐賀風景」(佐賀県立美術館所蔵)が描かれていました。このままの状態だと表面1点だけの鑑賞になってしまうと思い、幸い板に描かれていた絵を分割して佐賀県立美術館に寄贈したと聞いています。(河村栄三)